落ち着いて本読める季節やって来る
  死と寄り添って眠れる季節が



照明を落として瑕に触れてみる
  変はらぬ肉が指先に在る



狂う海揉まれて落ちた甲板に
  這いつくばった我の手にペン



物質の流れ判らぬ大雑把な
  目を持ち今日も生きてゐる我



手に触れた煌めき何故かかなしくて
  布団の中の闇に(くる )まる



氷風身を切る寒さより逃れ
  巨大なガラス張りの檻へ



薄く目を開けてみたるや未熟児の
  気味の悪くて暗に捨てたし



がっかりと肩を落として歩く日も
  消えぬ退屈骨髄の芯



流されて行く波の間に覗き見る
  (おか )の柳が笑ってゐたり
    何度も敗北する我なのか



夕映えの夏を捲る蝉の声
  時間が徐々に崩壊してゆく………



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