息殺し頁を開く見付からぬ
  私の世界は何処へ落とした



鈴虫を捻り潰してやりたいと
  思ふこゝろに偽りは無く



熊笹の薮の中飛ぶ蜻蛉有
  熱した目玉齧った獲物



柚子色のあわいとろけて街の端
  覆へり奇怪な虹のひとかけ



溢れ出す檸檬のマグマ痛み込め
  半透明の地獄を作る



階段の手摺の骨の折れたるを
  しっかと握る無念激しく



生まれ出る空白と共に我もまた
  生きて行くのだ今日も明日も



白に黒赤も見付けて眺め入る
  死に近い夜の澄んだ星空



赤い目を傾けて見る彼岸花
  熱い墓石 (はかいし )に漆が垂れて



刻々と闇の濁れる夕視界
  落ちぬ暗さが尚もどかしく



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