渦巻きを遠くに覗く空に見る
  涼しい夏の喪った光



菜の花を摘みて転がる花畑
  名を知らぬ虫空に一点



風止んで沈黙したる木々の間
  耳澄まし行く瞑黙の午後



幾何学に鎮魂曲 (レクイエム )聴く文机
  かなしき頁閉じられぬ儘



頷いて砂浜を行く星空の
  下に散らばる無数の影 影



不覚悟を嘲笑へるか喪失の
  感覚胸にふたがるる夏



波と風後は無言の風景に
  融けてゆく我遠くへ行きたい………



麗かな殺戮の午後枯れ葉散る
  死の残骸の中に(うず )もる



立ち止まる群列の中に知った顔
  復讐せんとする失はれた世界



うらぶれた街を憎みて足早に
  通り抜けたり夜明けの悪臭



inserted by FC2 system