後ろ手に猿轡され転がって
  目だけはしっかと見開いてゐる



(いら )へ無し我とあの()の挟む溝
  水流深く暗く流れる



微妙に湿って(はだ )に付く
  着古した服怖気立つ
    蛆が湧き出てのたうつ気分



蛍光を放つ茜の棚引いて
  映せり今日が沈める過去を



止まる海埠頭の(へり )に腰掛けて
  振り返る我何にも見ずに



狂へるか赤い光の照り返し
  ぞわぞわと肌撫でてゆく闇



死んだ目をして跳ね回る魚押さえ
  火に焙りたり自失のごとくに



蛆虫共をどうしようが俺の勝手だ
  所詮殺してしか役に立たぬ連中なのだ



(おか )にまだ未練はあるが小舟漕ぐ
  呑気なのやら諦めたやら



喪った木漏れ日の差す夏木陰
  腹痛抱え唸り寄り掛かる



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