谺して残るペンギンの群れの声 氷の谷間は唯々青く |
生活のだらんと垂れたバルコニー 軒並みに見て図書館へ急ぐ |
立ち涸れた井戸の周りに根を張って 水吸い上げる怪樹や憎し 這いつくばってなぞやるものか |
ぬるりとぬめる闇に手を 突っ込んで指掻き回し焼く ひしゃげた苦痛に喜悦が |
曖昧な眼窩に指を突っ込んで くるくる回る頭蓋があかんべえ |
馬の背に乗って感じる重圧と ヘリの音遠く |
怒りに飽きて唯座る 義憤も体を素通りする 言葉も影の中に溶け去る |
陳列室の奥の棚 裸の儘で転がった あの人の手に静かな破滅 紫に光るぽうと脈打つ |
予定調和のシナリオの 飼い馴らされた檻の中 今日も手を振る笑顔を見せて |
雨の中私と彼の死の希望 ぼたぼた傘も痛くない夜 |