きよきよと啼ける怪鳥巣の中に
  横たわる我夕餉時を待つ



()んぬるか何時も手前で立ち止まり
  眺めた籠の底に割れた卵



涼風に悔しくて泣く爪立てて
  逃した瞬間が指から零れる



移ろへる光集めて万華鏡
  覗いた先の空虚な瞳………



夢に見し崩落を唯待ち侘びて
  朽ち果ててゆく秋の明け方………



死んだ日は腐った魚が打ち上げて
  騒がしい浜常世の明かり



形而下の肉を裁ち切るその一閃光
  我の目玉を狙へと拒む



血肉を切り捨ててこそ天高く
  空ろな瞳今は赦して



腐爛した潮の香りの中に血を
  嗅ぎ付けて磯足跡を追ふ
    疲れた岩の舟虫が狂ふ



蝉の声已んで落ちたる(むくろ )(いち )
  余りの軽さに暫し見蕩れる



inserted by FC2 system