吹き散らる無数の波紋魅入りたる
  大気が描く重力の線



飛沫 (しぶき )に曇ったレンズの向こう
  立ち現るる非現在の影
    透視したる我透き通ってゆく



濡れ落ちた枯れ葉を踏んで歩く道
   ぐしゃぐしゃと纏ひ付く也生の滓



喧噪の奥より響く機械音
  眠らぬ夜に雨が降り込む



ささやかな夜闇の中に灯る生
  焼けた頁がふと崩れたり



ふんぎりをつけて寝転ぶ絶望も
  大したことはないとうそぶく



俯いて交はす憎しみ匙加減
  間違えてみる退屈凌ぎに



夕風に乗って流れる高い声
  何の悲鳴か現世 (うつしよ )の陰



我々と共に在るのか交感は
  癒えぬ疲れを背負いて家路



往き往きて無人の野中(うず )もれる
  穏やかな眠りやっと訪れ



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