藤の色ぼたる雨中に霞みたり
  萌える新芽が無秩序に伸ぶ



くぐもった声を通して聞いた名を
  百度唱へる逃がさぬやうに



一時の緑の風が濁り逐ふ
  だれた思考の焼け石に水



灼け付いたプールサイドに寝そべって
  皮膚をじりじり焼き焦す昼
    これで良いのか楽しむ父よ



上面に光沢を塗る快美感
  現はれるものが全てな世界



暑さ故一足す一が三とても
  怒るな君よ(わら )って駆け出す



鈴の音に死者の声鳴く夏の夕
  錆びた騒音が辺りを覆い



咲き誇る欲望に我絶望を
  抱いて眠る楡の木の下で



透き通る雲の絹糸織り交ぜた
  明るい空に幻暈 (げんうん )(おほ )きく



影の中瞳貫く反射光
  抗う声も風に消されて



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