順を追い枯れた手筈を整える
  かさこそと我賑やかにはしゃぐ



どぶの中落ちて藻掻ける雛一羽
  どちらが幸いなのかと問へり



病得て微熱の続く十数年
  割れた心は元には戻らず



甘い実を食べても茹だる暑さ哉
  アスファルトの熱大気を焦がし



切り替えた塩の心に風が吹く
  殊勝な顔で稼ぐ凡庸



彼方より爆ぜる知性の灯火に
  返す術無く立ち尽くす我
    戸惑いの中見えたる計算



幻の城の稜線くっきりと
  霞む空背に浮かんでゐたり
    反射光が孔穿ちたり



俯いた羊歯の根元に転がった
  宝石を呑む持ち主の血と



紛れ込んだ鷺の(はし )より下がりたる
  肉片の赤蛆たかりたり
    高貴の持続の無い生物界………



鬱に入り苦い杏を齧りたり
  どうしようもなく暑いだけの夏



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