崩壊を生き延びた手の力強く
  (くう )を掴めりぼちゃんと静か



夏の日の不意の寒気に思い出す
  裂け目ぱっくり開いてゐたるを



秋が来て私の命も終わりたり
  微笑みの中潜る千年



角度にて違う速さで過ぎる雲
  重心移し世界を引き裂く



無人にて(いら )へ返らぬベルの音
  木目の上で永劫が過ぎて………



コンクリで自己主張する蝉の声
  腹が溶け出す嫌な汗かく



俊足の病は機会逃さぬか
  嘆く響きが砂に滲み込む



のっそりと這い出た破壊眺め遣る
  処女の如くに身を投げ捨てる



黙然と湧き上がる雲苛々と
  ピンで留めたり卑小な我は



暗雲を抱えて眠る熱帯夜
  無風状態の静かな地獄



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