陰影の微かに兆す白無 (はくむ )まで
  飛んで行けるか私の翼は



顔上げる白い流れを遡る
  未来の記憶剥き取る亀裂



丸裸にされて独り暗がりに
  投げ込まれたる十歳の日々
    鼠を嫌悪し友とす恐怖



繰り返す空しいばかりの選択肢
  道出来る度空白も増して



道標 (みちしるべ )無視して進む散歩道
  気が付けばまた同じ道辿れる



夜の(はて )紫色 (しいろ )に滲む梅雨の雨
  湿気に吐き気催して歩く
    雲が解した月光みじめに



石の汗川に投げ入れ洗い落とす
  虚存の影に怯える岩魚



頭からもんどり打って転げたる
  階段の下(あか )の花咲く
    傲岸な猿(つひ )に悟らず



蒸し暑い夜の散歩に鳥が鳴く
  生命 (いのち )の恐怖に包囲されたり



沼の怪敬して遠ざく知恵も無く
  昨日の猫は膿み潰れたり
    静かな夜に虫の音響く



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