冷え切ったスープに蠅が落ちる朝
 幾許の星銀河に散るるや



煮詰まって固まる蛆の筋肉の
  失望を噛む波は寄せたり



今はまだ時期を待つ身の濁り水
  水底に棲む光は飛ぶか



ささやかな深淵を発つ航空機
  虫の湧いたる棺桶捨てて



救急車翳めて廻る揚羽蝶
  松の木陰に髑髏は揺れて



花束に潜んだ息はまだ居るか
  白痴酒盛り怒号どよめく



きらきらと赤水晶の望郷を
  マグマに溶かす漆黒の闇



銀色の昏睡に野火燃え移り
  駆け巡る(とき )重なって消ゆ



漆黒の衣に紛れて飛べる蛾の
  鱗粉輝く実体のある影



残照に己が拳を固めたる
  憂鬱更に怒りを熟し



inserted by FC2 system