骨組みも残らぬまでに整地さる
  建物の跡カネの空地



八釜しく赤い()鳴らし行き交った
  ドップラー音の無言の溜息



玄武岩砕いて割って覗き見る
  幾万年の無力な記憶



褐色の肌に湿った綿を当て
  霊気吸い込む嫌悪に唸りつ



朝の陽の霧に輝く花びらに
  忘却の海口を開けり
    そっと沈もう



我が身の愚劣に驚いて
  蒔ける種皆腐って実らず
    正気希求して止まない心



朝も夕も判らぬ白い世界にて
  本を読みたり寝床に転がり
    消えて行く現実………



背筋這う寒気の如き戦慄が
  部屋満たしたる窓の外から
    境界が皆薄れ行く世界………



後じさりして追い駆ける逆風に
  尚も留まる澱んだ瘴気



ぞわぞわと溜まる疲労に腰掛けて
  ぼそぼそと歌う空元気の歌



inserted by FC2 system