辞書ケース底に隠したあの写真
  過去の現実確実に在り



光り照るざわめく葉々の個性消ゆ
  数瞬の闇充分に長く



カラカラに乾いた内臓曝け出し
  エサを啄む鳩が(せは )しい



折れた足軽い体重で誤魔化して
  休めた羽根の中に寄生虫



水流を堰止めて組む斬首台
  天の御声 (みこえ )は合唱するか



嘆き込め天輪桜で花見する
  吊るる屍体は竜胆 (りんどお )の青



30分無風の庭に石ころが
  石室閉じて引っ掻いた穴
    ごろんごろんと腹を下せり



凝っとして凪いだ詩集に目を寄せて
  嵐の後の成熟を思ふ



爆音が遠く翳める晴天に
  おでき (、、、 )痛くて傾いた儘



途切れたる水源はまだ復さぬか
  世界の心理誰が量らん



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