或る朝の無言の予感もどかしく 胸引き裂いて塔を見上げり |
朗々と響ける讃歌の残響が 谺する谷今日も影射す |
朝焼けに響く鉄骨黒い影 川に落ちたる髑髏の姿 |
淋漓たる鮮血鼻の筋に塗り 何と美しあの吸血鬼 |
笛吹いた彼女の顔が遠くなり やがて混じれる奇怪な印形 |
ベアトリーチェがエウリディーチェに化ける時 元々二人が一緒なるを知る 蛆のたかった狂った女だ |
逃走を図る私の足元に 纏い付く髪振り払う 払い切れぬ儘必死で走る |
幽玄を一瞬連れた通り雨 過ぎたる後に空漠滲む |
殺がれたる我等の手にはペンがある 口封じらるペットよ見ていろ |
顳かみ*にへばりついたるフレームと 洋書売り場をそわそわ回る 何か買わねばならぬ気がして |