きつい縄更に引っ張り窒息の
  瞼に見ゆる美しい生



その時読んでいた本と
  写った記念写真の私
    偽善の笑顔写りが悪し



賛歌嗅ぎ嫌悪顕にしたる我
  連絡船は多層を成して



北海の縁に夕陽が沈む頃
  物狂ほしさ押し殺し
    ゆっくり髯を撫でた我の手



断崖を落ちたる滝の裏側を
  船が行く也絶叫届かず



目の前におれど一千里も遠く
  離れて独り我は孤独に



彼等とは同じ国語を話せども
  通訳おらぬ(ひと )りの私



安っぽい聖書捲れりパラパラと
  窓の外には煤けたる壁



ぎりぎりと腿に食い込む指先に
  悔しさ込める精一杯に



所詮まだこの世を花と感じる程に
  観じてはいない未熟な私



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