嘘吐きを縛る荒縄手に提げて
  唸る資本が荒野を往けり



唯一人取り残された水底で
  微睡み乍ら耳を澄ませり



ふくよかな虚数転がり掌に
  線条痕を残したる式



足跡に増える黴の()引き千切り
  真偽空間衰へて散る



爆音を残して消えるヘリの影
  曇れる空に予兆広がる



鮮血に染まる観客席に立つ
  彼等が見たのは我等の未来か



火の中の開く(あぎと )に頭入れ
  明日の天気を占ふ女



沛然と降りしきる雨身に浴びて
  昏く輝く橋桁を見る
    静かに溜まってゆく破壊神



赤々と揺れて輝く警告を
  うっとり見遣る我は夜の子



秘めた怒りを棺桶に
  入れて木乃伊にしたる夜
    復讐ならばさぞかし素敵



inserted by FC2 system