気が付いて象の死骸を運びたり
  象牙に彫った小さな仏像



唯殺し殺して歩くその道の
  上に転がる百合と水晶



泣きそうな絹の手触り指先で
  確かめるそっと涙堪へる



「山彦さん真似しないで」と叫ぶ子等
  橋の下には流れる奈落



空っぽの座席を乗せたバスが行き
  烏は森で屍肉啄む
    明日の朝焼け今夜は見るか
    明日の朝焼け今夜は見るか



人の手が作りし畸形唇を
  動かして何か喋ろうとする
    閉じた窓に喋ろうとする



蠍座を銜えた猫に鏝当てて
  肉焼く臭い夜空満たして



怪獣が今にも出そうな風景を
  凝っと眺める
  凝っと眺める



薔薇千切り落ちた滴は何の汁



同定を免るるモノ悲鳴上げ
  遅刻恐れて壁掻き毟る



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