近付くか金属製の松葉杖
  舞台裏側走る灯火 (ともしび )



擦れ違う屑屋の車と救急車
  形が要るか特殊な形が



焦げ付く様なバニラの匂い
  頭の芯を痺れさせ
    羽を広げて窓から飛べり
      昨夜の露が()み込んで重く



一隅に蹲る影目を剥いて
  冷気の中におおんと泣けり



愚かなる傘を開きて突き進む
  亀の頭に塗る薬無し



密会の河原に二人曇る闇
  我が殺した白鳥 (しらとり )(ひと )



虹の端咥えて振った犬の耳
  嫌悪と軽蔑どちらが勝れり



漁に出て還らぬ船の残骸が
  扉を開けて光漂う



持続する警告の音遠く聞き
  撥ねられたるは石か頭蓋か



赤熱の両手額に(かざ )し出し
  唸る苦悶がどろりと零れる



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