ぐずぐずと溶けて崩れる青の壁
  隠した髑髏の甘い面影



湖か唯の大きな水溜まり
  拵えられた美景を見下ろす



肋骨の軒下借りる烏ゐて
  何かの死体をしつこく啄む



極寒の中を歩ける(あか )の城
  遙か遠くに見えれど触れて



稲光りはっしと取って頬張れる
  黯い邪悪赤く(ひら )ける



さあここに打ち込めや君胸許を
  開いて晒す(けが )れの刻印



濡れた路面にふたつの目玉
  殪れた虎の(おほ )きな頭
    抱えて齧る蚤が血を吸う



俗事にて掻き乱された想念を
  疲れた老婆の如く集める



カウベルの様に並べる照明に
  何時かの舞台の失敗想う



柿の実をざっくり割ってじゅくじゅくに
  熟した芯に蟲が一匹
    握り潰してやりたくて出来ず



inserted by FC2 system