時雨吹く支流溢れて溺死する 鮒の腹には赤証残らず |
悶々と形而下的な衝動に 悩む案山子の |
唐突に我攫おうと吹いて来る 世話焼きの火は |
性欲に精神一箇売り渡し 貴方今夜はお暇でしょうか |
屈折す視界の端に見ゆる虹 架空の女がぱくりと食べる 穴を穿ちてふたつとも埋める |
髭の無い顎をひと撫でして指を 突き立て「見ろよ真似てる滑稽だ」 |
二六時中谷に響ける電子音 自分の正気に驚ける贄 |
モザイクが渦を描いて螺旋消ゆ 赤い谺に悲鳴を乗せる |
正確に一センチ毎切り刻み 余った肉を静かに潰す 誰に復讐したるか我よ |
穴掘ってティコの噴火を喚び覚まし 凍れる大地に精をばら撒く |