跨ぎ越す溝をちくりと覗き込み
  知らぬ振りして顔を背ける



狂い咲く桜が信じられぬ也
  樹皮を剥がして肉色を見る



こそげ落ち異臭放てる百科事典
  風に紛れず書棚に澱む



散文と化した日に飲む生水に
  疼く腹痛避難場所無し



春の日の重い通奏低音に
  格子掴んで冥福叫ぶ



窓開けて逃げ場所探す十代の
  頃は滑稽どう足掻いても



曲解を恐れずに言う度胸なし
  今この瞬間より他は皆他者



詩想殺ぐ俗人共の振る舞いを
  忘れんとして深呼吸ひとつ



消滅の証言届く白光に
  躰縮めて世界を夢見る



灼熱の点通り過ぎ我等また
  絶対零度の空間を往く



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