濡れそぼる傘を案じて嘆く者無し
  光る地面に足跡ふたつ



泡立てた憤怒ひと息に飲み下し
  死んだ拳に喉がつかえる



夏の草さやかに凪げる海の(ふち )
  優しき深淵



優しい闇が両手広げて
  おいでおいでと我招く
    森は静かに微笑んだ儘



ざわめき立てる何処かの蠅を
  何故懐かしげに憎み乍ら
    あれも明滅したると思ふ



綿のごと形を成さぬ想念の
  綻び見付けググッと千切る



禊無き朝を迎えるゴミの街
  隠るるものの無い体たらく



肌寒い光線が川貫ける
  露の雫が谺する朝



輝ける火球が僅か一斤の
  パンを求めて踊れるダンス



低空を紫煙邁進して行ける
  覆われた街の輪郭なぞる



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