我が膚を掠め過ぎ行く喧噪に
  吐き気催し金を払へり



けばけばしネオンサインが小突き回る
  大量の自我がでろりと溢れる



濁り行く薄紫の空を背に
  がらんとした(あな )螺旋を描く



血斑の様に広がる花の痣
  我を責めるな
    我を責めるな



茫漠とサーチライトに照らさるる
  揉み手面した貪欲な口



誰も皆見上げぬ月は照らさない
  アポロのことなど忘れた群集



砕かるるこの身五臓も差し出せど
  人鬼の欲は限りなく深く



もの寂し図書館に唯立ち竦み
  本の背表紙けらけらと踊る



水瓜切るざっくり割れた赤い腑が
  種を散らして天上を見上げる



顰蹙を買った言葉を吟味する
  烏が屋根をダンダンと行く



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