さんざめく家々の記憶今は亡く
  墓標代わりの石も土の下



惹き合える銀河と銀河の狭間にて
  光年の孤独誰が埋めたる



通り雨黒く光れる石地蔵
  顧みる者無い雑木林



引き裂いた肉の扉に
  白く輝く洞窟が
    我を(いざな )う 密かに ゾッと



白鳥の飛んだ先にはカシオペア
  世界が中心を(いだ )く一瞬



人の群れ絶えて久しい都会の上
  違う星座が今年も瞬く



漂泊の絶対零度の塊に
  狙い定めておらびを放つ



冴え渡る腐汁滴る彫刻の
  廃都の門に凛と聳える



漆黒に燃え盛りたる聖有
(みどり )の瞳に記憶を忘れて



白光に威風堂々往く影は
  死せる軍人の知られぬ反転



inserted by FC2 system