縁取らる記憶の光景淡けれど
  血の一滴のごと呼ぶ戦慄を



口内炎を転がすごとくに目を覚まし
  目を閉じた儘夢に追はるゝ
    記憶にならぬ疼く現在



彼が呼ぶ虚空隔てて私の名を
  深淵渡る術なきを知りつつ



空間に輝点がひとつふたつみっつ
  許容範囲を超えた輝き!



全方位星の叫びが谺する
  翼広げて夜空に飛び立つ



寂滅の大地に立てる人影の
  今は微かに掠れた姿



硬質の渦が渦巻くvoidにて
  尺度も知らず永劫を漂う



荒涼とした風が吹く忘れらる
  道に荒涼とした風が吹く



赤茶けた凍える地平線の彼方
  老いた太陽は瞑想を続けり



意味もなく笑いの発作を響かせる
  ひとり進めるタイタンの谷



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