くれなゐのプールに浮かぶ髪一束
  主失い流れず漂う



排水管溶けて流れるプラスチック
  ぶつ切りに切れた言葉を浚う



畳々と重なる空の彼方へと
  吸い込まれてゆく遠い(あしおと )



繋がるる天の切れ目に目を凝らす
  あそこに若しや待つ人を待つ



隙を見て健き(たけ )き空行く鳶一羽
  赤い胡桃は熟したろうか



半熟玉子にスプーンを
  グサと突き立て抉り取る
    生命 (いのち )の汁をズズリと啜る



彼の目に私と築いた友柄 (ともがら )
  残っておるや勝手な幻想



腰掛けてナキガラを食う男有
  彼の頭上に高い青空



闇を切り裂く雷鳴に
  一瞬青く浮かび出る
    無人の塔に蟠る
      記憶の気配遙かに近く



ものみなの滅し絶えたる胎蔵に
  残像の宇宙かのように在る



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