泡 (あぶく )食み味の消えたるガムのごと 　　ジャケット羽織りて靴の紐結う

失意にも秘め匿したる悦び有 　　然 (しか )れど今日は疲労のみ也

労働がカネと化す日の嬉しさよ 　　バカげた仕組みに自嘲をひと匙

描写のみ記述のみなぞるのみ 　　言葉のムダな使い方 　　　　解剖だけで組み立てをせぬ！

暗雲と高揚が来て我を喚ぶ 　　嵐の中に出でよと叫ぶ

今は見えねど目の前の 　　無限に重なる断面の 　　　　角度を変えてほんの一瞬 　　　　　　輝く時を逃さずに喰う

街ありて響き続ける電子音 　　どうして皆 (みんな )発狂しない

雪のごと舞い降りる胞子掌に 　　載せて着床したるは嬉し

枯れススキ掻き分けてゆく朝靄に 　　白鳥の声は不吉に響けり

暖かな木漏れ日に笑みをバラ撒き 　　鳥の羽根抜き犬を去勢す 　　　　男の太った後ろ姿