押し寄せる乞食の大群薙ぎ払い 柱の立たぬ泥地に |
地上では蟲の大群蠢けり 遙か頭上の巨大な陰影 |
夕焼けに遠い恐龍のシルエット 山々の影と混じって伸びる |
残像に小さな門が我を呼ぶ 蒸発するよな青磁の柱 |
一条の光の中に立つ影よ 君は何者近付いて触れる |
追い駈けた優しい闘士赤熱の 炎に焼かる骨抱きて 蹲るなり呆然として |
全事物目の遍在に怯えたり 「事象」に切り換え更に恐ろし |
巨大な壁が視界を覆う 更に巨大な天蓋が呑み込む ああ 鬩ぎ合う有限者達! |
幹がさわぐ 葉がずれる 動かぬ樹木が動いてゐる 今の形に固着してゐる |
沢の奥苔の 腰を下ろして焦点を結ぶ 水の匂いに存在が 拡散してゆく大気の中へ |