ゲネプロのスポットライトは何照らす
  演じ演じる彼奴 (きゃつ )の仮面は?



薄闇の常時被さる箱庭の
  通りを歩く非在の気配



春の日の急な寒気の物悲しく
  通りを眺める非在の渋滞



色水に絵の具垂らしたような雲
  すっと気流が線引いて
    脈で繋がるジグザグの鎌



風に舞う頁の如きオンド=マルトノ
  憂い疲れて鼻先で嗤う



薄められた時間を生きる労働者達
  深き眠りの世界を知らず



濡れた大地に穴穿ち
  流るる雲を赤く染め
    太った鳩を殺して回る
      烏こっちへ来てdisgust



�ィタト=ハラムの丘の上
  谷を見下ろす宮殿の
    上にぽっかり空いた月
或る晩生温かい風が吹き
    皆悪徳忘れて眠る頃
  急にニッコリ笑ったその月が
    ぐいとその赤い口開き
        ひと声鼻で嗤ったかと思うと
      何もかも全部吸い込んでしまったとさ



ビルひとつ丸ごと根城と化すツバクラメ
  潮が酸食する基礎部分
雑踏の中の散文的なる孤独
  一箇の蟻と化したる時間



inserted by FC2 system