万界鏡に曇りが見えて 試しに擦ってみれども消えず 泣いて頼んでみれども消えず |
電信柱がまるで電信柱にやうに泣いてゐる このことを字に書いてみる おお これはまるで字のやうではないか |
反転する世界にひとり立ち尽くし おろおろと唯為す術を知らず |
うっすらと継ぎ目のついた天蓋を 開けてみたくて荒野に出づる 開閉スイッチ叫んで捜す |
その昔君と作ったプラモデル 買ってみたけど開けられなかった |
あの日二人で見た夕焼けは とっても熱く とっても遠く とってもとっても昏く 怖かった |
居た筈のない彼に訊く 君は誰かと 彼が答える 君の悪夢だ、と |
大空にぽっかり空いた黒い口 楕円軌道で星空を呑む |
近代の寂しさについて考える だけども止める生きるのが先だ |
毛虫草毟って捨てるツツガ虫 岩の陰からそれを見ている |