ミルク飲む山河隔てて幾百里
  名も無き牛の養分を飲む



万脈に生起せる我ここに居て
  目の前で起こる事象を眺む



叫べども声の届かぬ真空に
  血の玉が浮く怨みの結晶



氷柱の白く光れるその芯を
  閉じ込められぬ零下二十度の青



うつくしと思ふ瞬間かなしくて
  顔をそむける歯を食い締る



車窓から車道に落ちた鼻ひとつ
  ぐでんと転がる



爪剥がし(ひら )けた穴を確かめる
  中を覗けば昏い血の川



街灯に首縊りの縄ぶら下げて
  電線束ねてぎりりと引っ張る



奇ッ怪に道の狭まる城下町
  護る城なぞ疾うに無けれど



存在に固着すれども影ばかり
  あの瞬間は何処 (いずこ )に消えり



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