絞り袋の奥の底
  外を見上げて空探す
    「あいつが空と云うものか随分狭いな」



鏡から反射する光に影落とし
  私を私でなくする呪文



手の平を返し方解石を投げる
  (ほそ )く砕けて地に横たわる



道端の折れてひしゃげた車椅子
  雨に打たれて顧みる無し



吊り橋をぷちんと切って手を振ってみる
  ヤッホーおーい気は確かかい?



フォーク刺し膿み溢れたる肉汁を
  ずずっと啜る蛆の如くに



峰々を黒く縁取る黄昏に
  咆哮ひとつ夢のごとくに



シミひとつ人に言はざる記憶の痕跡
  掘り起こす勿れ無邪気な憂鬱



真ッ黒に塗り潰したるカンバスに
  一本線を引く愛をもて



空覆う赤と緑のカーテンの
  下の針葉樹達の不安



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