新雪の肌理に惑ひて踏み出せず 暫し視姦す数時間の官能 |
水底より立ち昇る 微かな泡聞き止めて そっと囁く生成の秘密 |
橋の下巨大な肋晒しつつ ぐでんと倒る鋼鉄の竜 |
落日に霞む意識を集中し 倒るる前に呪詛の一撃 |
鼻水と共に脳髄も出る くしゃみと共に精神も飛ぶ 憎き 憎き 憎き 花 粉 症 ! |
一面に白く光れる曇天に 既視感覚ゆ生まれる前の |
叫ぶごと光る卵に手を伸ばし 握り潰そうか暫し躊躇う |
慰撫秘めた指先ひとつ頬に触れ 固き絶望にそっと寄り添う |
詰め固めた荷物小脇に抱え急ぐ 行き先目当て考えぬ儘 |
雨上がる高い空には霧の雲 茫漠とした不安広がる |