沈む雪朱く染まりて血のごとく
  倒れ伏したる巨人の躯体



悍ましきことと云えども生命 (いのち )
  生きなればこそ悍ましき也



衰える月の光ぞ懐かしき
  明るい夜空は味気なきなり



黒い極にて冷えびえと
  白き光の切り刻む
    氷と潮の声無き絶叫



満ちてゆく氷水晶 (こおりずいしょう )崩れ出し
  喰らいつくなり我の喉笛



極北の巨橋の架かる氷棚
  我と戯る愉しき破局



淋漓たる血の一滴に呪い込め
  我が唄いしは恋の唄也



残照に溶けゆく狂気オリオン座
  何時果てるなりこの愚なつかえ



ひび割れた黒い巨体の礎に
  釘を打ち込む怒りを込めて



山々の遠き黄昏峨々たりし
  麓に恐怖近付き難し



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